「それにしてもアニキっ、どーしてメイドであるわたしに婚約者のことを教えてくれなかったの!」
「…まだ完全に決まったわけじゃねえしな」
「えっ、シキ兄そうなの?椿さんとは絶対結婚じゃないの?」
「…一応は予定ってだけだ」
「なにが予定だよ。絶対だろ、長男なんだし」
いつの間にかこんなふうにサラッと葉奈も会話に混ざってくるようになって、また一段と家族感が増した。
嬉しさがあるのに今はとてつもない沈黙。
葉奈が自分から「長男」だの「次男」だのと言ってくると、やっぱりまだそれなりの緊迫感がどこかにある。
………望、そんな怖がらなくて大丈夫だからお姉ちゃんに任せろい。
「ま、まあっ、わたしは応援してる!アニキと椿さんめちゃくちゃお似合いだもんねえ〜」
「……俺は葉奈とのほうが似合ってると思う」
「えっ、なんで葉奈…?」
アニキがそんなことを言ってくるから、つい疑問を向けてしまった。
するとまたまた広がった静けさ。
なぜか楓くんが冷や汗を垂らして、どうにかわたしに察しろ視線を送ってくる。
………ごめん、微塵たりとも察せませんよこのポンコツメイドは。



