日向家の諸事情ですが。





「わたしは……やめとこっかな。だから望、わたしの分まで楽しんできて」


「え……サナ、行かないの?」


「…うん。ここで待ってる!」



メイドのお仕事あるし!


大東家のお嬢様のパーティーにメイドが参列するだなんて、聞いたことがない。

参加するなら使用人として仕事としてだったら分かるけれど。


………ううん。
本当は見たくなかったんだよね、これ以上。

アニキと椿さんが並んで立っているところを。



「おまえはもう日向家の人間だっつったろ、サナ」


「……アニキ、」


「おう。…おまえのアニキだ、俺は」



恋人になれないまま家族枠に嵌ってしまった、憐れさである。


でもさ、そうじゃんか。

あのとき椿さんに助けてもらったお礼、しなくちゃだよね。

ここじゃん絶対。


わたしが初恋を諦めて応援すること。



「俺たちが参加ならおまえも必須参加なんだよ。行くぞ一緒に」



ぽんっと頭に乗せられた手。

婚約者の女性を前にしてこんなことをやってしまえるアニキは、わたしのことを本当に妹のようにしか見ていないんだと。



「……うん。…へへ、ほんとは行きたかった!」



────笑顔、がんばって作ったぞ。