「…えへへ。無理だなあ」
あ、ローレンとはしゃぎすぎてエプロンに砂がついちゃってる…。
あのお嬢様は砂どころか薔薇でも着飾っているかのようなエレガントさがあった。
なーんにも勝てっこないや、こんなの。
「…葉奈、今日はずっとわたしのそばにいて。たのむ…」
「……言っとくけど俺は識の代わりには死んでもならないから」
「うん…、葉奈は葉奈だもん。アニキの代わりが葉奈なんてやだ…」
「ぶん殴られたい?」
「ひっ…!す、スミマセン……」
婚約者なんてもう、恋人みたいなものじゃん。
どうしてアニキはわたしに椿さんのことを話してくれなかったんだろう…。
メイドである身として知っておくべき情報のはずなのに。
「そ、それにしてもこんなにも素敵なお嬢さんと識様が婚約者だったなんて!まったく識様は教えてくれないんだから水くさいですよねえ〜!」
「ふふ。彼は昔から自分のことをあまり話す人じゃないから、いいの」
「…無愛想ですもんね!なに考えてるか分からないときがあるっていうか!」
「けれどああ見えて優しい人なのよ?」
「…そう、ですね!」



