「…識のこと、さっさと諦めれば?」
「へっ?なっ、なんで!想うことは自由じゃんか…!」
「傷つくことは必須でも?」
「え…?」
「───ごめんください」
門前で戯れていたわたしたちの背後、どこかで聞き覚えのあるような声がかかる。
いつの間に横付けされていたんだろう高級車とか、テイルコートに蝶ネクタイの執事とか。
鼻をふんわりくすぐるローズの香りとか、お姫様のような可憐な女性とか。
「あら…あなたは……」
「あっ…!あのときの…!!えっ、どうしてここに…!?」
「ふふ。お元気そうで安心しましたわ」
「そ、その節はどうもありがとうございましたっ」
いつぞやかに見知らぬわたしを実家まで送り届けてくれた親切なひと。
いつか必ずお礼をすると言葉だけで約束したが、まさか彼女からこうして足を運んでくれてしまうとは……。



