「…ん?」
表情さえ変えないあっけらかんとした奴らしい返事が、たぶん、逆にダメだったんだ。
「…っ、────…はな……っ」
涙いっぱいに両手を伸ばして走り寄って、ぎゅうっとピンクベージュに抱きついてしまっていたなんて。
踵を上げて首に腕をまわして、全世界の誰もが驚くことを。
そう勢いよく抱きついたわたしは、体勢さえ崩すことなく受け止められた。
「いいよーーう…っ、許すよーーう…っ!わたしもごめんなさいいぃぃぃ……っ」
「……おい、なんで俺だよ」
「寒かったっ、暗かった…っ、あの地下牢めちゃくちゃ怖かったぁぁ…っ」
「…あー、俺に通訳しろって?」
明日には笑ってるから。
ぜったいわたしらしく笑えてるから。
だから今日だけ、今だけはごめんねみんな。
「楓、悪いけどこいつの初めては俺が貰ったよ」
「っ…!?だっ、だれがそんなこと言えっつったバカっっ!!!」
「なら自分で言えば?俺はこれしか聞き取れなかったわ」
「〜〜っ、もう…っ!クビにしてやるこんな通訳人…っ!!」
「そりゃうれしーや」
でも、葉奈。
あなたのことだから背中に回してくれることも、やさしく宥めてくれることもないけれど。
わたしを引き剥がすことも、振り払うこともしないんだね。



