日向家の諸事情ですが。





訴えかけるように手を握ってくる楓くん。

失いかけた信用というものを、小さなことから積み上げようとしているんだと思う。



「望っ!おまえもなんか言えって…!サナに見捨てられたらどーすんの!!」


「……みすっ、見捨て………むり息できない、」


「だから病むなって馬鹿っ!!」



大嫌いと、言われた。

ここまで弁解されてわたしを守るための嘘だと理解はしたけれど、心にはやっぱり残っている。



「…サナ」


「っ…!」



改めて名前を呼ばれると、どんなふうに返事をすればいいのか分からなくなる。


こんなこと……なかったのに。


日向 識に名前を呼ばれるだけで胸がドキドキして、1日頑張れるって思って、もっと求めたくもなって。

アニキアニキって、わたしオリジナルの呼び名で呼ぶことが何よりも嬉しかった。



「俺たちはおまえが……必要、いや、そうじゃねえ。…大切…、とも、ちげえ」



いつもわたしが追いかけるか、背後から支えてくれていた彼が、初めてわたしの前に向き合うように立った。


なにかを言いかけて、またやめて。

別の言葉を紡いで、またやめての繰り返し。