ここは檻になってはいるものの、ある程度揃っている簡易的な一室だった。
カーテンで遮られた最低限のトイレもシャワー室もあって、すこし設備が整った独房とも言える。
「やだ…、いらない…」
「せめて水だけは飲めって」
「…いらない」
いらないの。
もう、なにも信じられないよ。
祖父からの手紙から始まって、このペンダントに置物。
しまいには大好きだった人たちのあの目。
アニキ、楓くん、望。
みんなして敵を見る目だった。
「だったら俺の部屋くる?」
葉奈の部屋……?
「ここからだといちばん近い」
「……いかない」
すべてが嘘、うそ、嘘、うそ。
この人もそうなんじゃないのって、信じることが怖くなった。
だってそうじゃん。
考えてみれば昔からわたし、お母さんに褒められたことがなかった。
「さすがは私の娘ね」を絶対に言われなかった理由は、わたしが出来の悪い娘だからじゃない。
ほんとうの娘じゃないんだから、そんなの言いたくないのは当たり前のことだ。



