「そんなに大事なのかよおれたちの家を潰すことが…!!」
「っ…、なんで……なにが…、」
「裏切り者。2度とおまえの顔なんか見たくない。…犬ってより、そんなの泥棒猫じゃん!!」
ほら、知らないんだよ。
こいつ何も分かってないんだよ。
これが演技だったら下手すぎだし、データをある程度盗めたならそれこそ屋敷から自ら出ていくだろ普通。
でもこいつはついさっきにもハッキリ「やめない」って言ったんだ。
「のぞむ…、わたしのこと、信じて…」
「……、そうか。あのときボクの部屋も監視してたってことか。だから夜も毎日話しかけに来たんだ…」
「ちがう…っ、そんなことしてないってば……!」
「ボク……ひとの弱みに付け込んで騙すおまえみたいな人…、大嫌いだから」
まあ…これが人間だよな。
どんなに自分の心を救ってくれた相手とて、金や地位や自分の居場所を奪ってくる存在と判断した瞬間に敵とみなす。
それはもう生物の防衛本能だ。
俺は自分の立場に少し感謝してしまった。
言うなれば地獄にいたから、地獄みたいな経験をしてきたから、地獄を生き延びた代償として持ってしまった目だ。



