日向家の諸事情ですが。





惚れた男に胸ぐら掴まれるとか、トラウマ以上に爆笑なんだけど。


……さすがにやめてやれよそれは。

俺は識の腕を掴んで、ギリッと力を加えた。



「離せ葉奈。こいつは日向家の裏切り者だ」


「……裏切り者?」


「うちの情報だけじゃなく、顧客データがいろんなところに撒かれてる。うちに回ってくるはずの資産さえ、なぜか半分以上どこかに流れてるんだよ」



……なるほど。

とうとうバレちゃったらしいね、メイドさん。


すべて把握してスパイとして活動していたなら、こうなった場合の対処法もある程度は予測できているはずだというのに。

なんのこっちゃと、ひとりだけ理解が追いついていない本人。



「やっと特定した。…こいつが俺たちの秘密や行動をすべて売っていたらしい。これはもう、うちの顧客たちにも回ってる情報だ」


「…あの人は知ってんの?」


「ああ。父さんも来週戻ってくる予定だ」



どうやら高みの見物をして面白がれないレベルになったらしい。

下手したら俺たちの家は終わる。