日向家の諸事情ですが。





盗撮、盗聴、スパイ。


そこまでおまえは器用じゃないはずだ。

なにかあればすぐ顔に出るし、今だって「何か」があったからずっと心ここにあらずなんだろ。



「おまえだけは今までのメイドとは違うって、俺に思わせてくれよ」


「……っ」



ありえない。

俺がこんなことをほざいている。



「っ、わたし…、わたし…っ」


「…なに」



唇をぎゅうっと噛んでまで、なにかを必死に堪えている。

その顔、俺も知ってるよ。
自分に我慢を虐げているときの顔だ。


俺だって何度、何回と、小さい頃にやったか分からない。



「なんでも……ない、」



思わずチッと、舌打ちが漏れた。

たったそれだけで身体を震わせる姿に、俺のなかで罪悪感と苛立ちが交差する。


………おまえがそんな弱くなるとか、やめろよ。



「葉奈も…、小さい頃から……いろいろ苦しんできたかも、だけど…」



ようやく何か言い始めたと思ったら、つまんないことを吐き出してくる。

おまえに俺の過去を話した覚えはないし、前だって知ったふうなことばっか言ってきて腹立つんだよ。