日向家の諸事情ですが。





「…ちょっと来い」


「えっ、わ…」



準備万端だというのになんにも盛り上がらないリビングを抜けて、俺はそいつを連れ出した。

屋敷内の非常階段。
とくに夜は誰も通らない場所。



「やめんの?」


「…え…、」


「とうとうメイド辞めるのかって聞いてんだよ」



俺の圧に耐えられなくなった?
俺の脅しが今更になって効いてきた?

おまえだけは何か違うと思ってたよ俺。


いろんな意味で、今までのメイドとは違うって。



「やめない…」


「なら、なにか上から命令でもされた?」


「え……?」



そのペンダント。
今もどこかで誰かが見てんだろう。

おまえはそのデータを常々だれかに報告し、この日向家の情報さえ裏で渡している。


……って、最初は思ってたんだよ。



「なに…言ってる、の…?」


「サナちゃん」


「っ…!」


「…ちがうだろ。おまえは」



なんにも知らないんだろ、たぶん。

母親から貰った宝物だと言っていたおまえは、本当にそのペンダントを宝物だと思って今も身につけている。