「みんなはもう寝たよ。アニキは…お仕事で今日は帰らないって」
アニキってなんだよ。
あの男がいつおまえの兄貴になったんだ。
てか、そんなアニキに惚れちゃってんのはどこの誰?
と、からかってやりたい気持ちもあるが、最近のそいつはどこか遠くを見つめる目ばかりをしていた。
「ごはん…食べる?」
「…なんか軽いもんない?食ったけど食ってない感じ」
「軽いもの…、シェフさんはもう帰っちゃっただろうし……あっ、パスタで良ければ作ろうか…?」
「それでいい」
楓と望が修学旅行のお土産に買ってきたフランスのパスタソースがあるという。
1度だけ休日の昼に出したものの、意外にも弟たちには不評だったと。
このメイドだけは美味しさを感じたらしいのだが、ひとりで食べきるぶんには量があったため、ちょうど俺に出してきた今。
「……べつに悪くないだろ」
ひと口運んで、素直にコメントを残す。
認めたくないけど、俺とこいつの味覚は対抗するようで分かりあえる部分もあることが実証済みだった。



