「………、」
宛先さえ書いていない封筒だ。
けれど手紙の書き出しを読んですぐ、わたし宛だということを理解する。
じいちゃんの達筆な字で書かれた、直筆だということも。
「サナへ」という書き出しを見て、わたしは再び封を閉じた。
「ただいま…戻りました」
「サナ…!おじいちゃんが亡くなったって…」
「…うん。今日からまたお仕事に戻るから…、勝手な真似して迷惑かけちゃってごめんね」
元気、出さなくちゃ。
わたしのこんな姿を見てだれが悲しむって言ったら、きっとじいちゃんだよ。
「迷惑なんかじゃないって!シキ兄にもおれから伝えといたし、なんだったら落ち着くまで実家のほうで───」
「大丈夫!わたし、ここが…好きだから」
「…わかった…けど」
「……よーしっ!お洗濯、たぶんいっぱい溜まってるでしょ?」
「ボクがやっといた」
「ええっ!ありがとう望〜!」
その夜、祖父からの手紙を読んだ。
10人姉妹のなかでわたしだけが日暮家の実娘ではなく、養子だということ。
そんなわたしを母がいつか私利私欲のために利用するのではないかと、祖父はずっと案じていたこと。
祖父はわたしには日暮家に染まらず自由に生きてほしいと願っていたこと。
────それが、血縁関係など無かった亡きじいちゃんがわたしに置いていった、身勝手すぎる真実だった。
*



