日向家の諸事情ですが。





「お母さん…、どうして教えてくれなかったの…?なんで嘘ついたの…?」


「…あなたのためよ」


「わたしの…ため…?」


「お義父さんはあなたのことだけは特別かわいがっていたから。…あなたの仕事に支障が出ると思ったのよ」



母までそんなことを言う。

仕事仕事って、仕事がすべてじゃないでしょ。


わたし……じいちゃんになんにも伝えられなかったんだよ。


それから約3日でお通夜もお葬式も静かに終えて、心に虚無感を抱えたまま、わたしはとある約束を思い出す。

幼い頃、じいちゃんがわたしにしてくれた約束を。



『ボンサイのしたー?』


『…ああ。もしワシが居なくなったら、中庭の盆栽の下を掘ってくれるか。じいちゃんがいちばん気に入ってる盆栽じゃよ』


『わかった!サナ、タカラモノさがしする!』


『…そうじゃよ。サナにだけ、特別じゃ』



盆栽の下…。
じいちゃんがいちばん気に入っている盆栽。

日向家に帰る手前、実家を出ていく手前、わたしは咄嗟に中庭へと戻った。



「ほんとにあった……」



宝物とは言えないけれど、それは小さな木箱。

土に埋もれても朽ちないように、特殊な素材で作られたものだということは分かった。


パカっと開けると、そこに入っていたのは1つの封筒のみ。