こぶしを胸の前で握って、意味深な眼差しにどうにか対抗して。
「…そんな震えてよく言うよ」
「え…、」
「おまえ相手は無理。って、言ったし俺」
「でも…撤回、された気が……」
不意を突かれたように目の前の瞳孔が微かに開かれてから、スッと身体ごと離れる。
ストンっとわたしはその場に座り込んでしまった。
緊張と恐怖が緩和されて、足が砕けちゃった……。
「あっ、ありゃ……」
「ほんと処女ってめんどい」
「っ!?やめてっ、デリカシー!!」
「まさにそーいうとこだよ。もっと色気と余裕を備えてから男を誘おうね、メイドさん」
「〜〜っ!もうっ、ばか!!」
バチ───!!
「…あ、停電」
なんと、なんと、まっっくら。
こうなるんじゃないかと予測はしていたものの、いざ起こると脳内大パニック。
「うそーーっ!!ねえっ、どこっ、葉奈…!どこにいる…!?」
「…………」
「黙らないでぇぇぇ…っ」
足っ、砕けてるの…!
立てないよもう…!!
雷の音はどんどん近づいてる気がするし、ザーザーと雨は止む気配ないし…っ。
メイドとは、いついかなる時も冷静に正しい判断をせよ。
し・る・かっっっ!!!



