日向家の諸事情ですが。





「あり……と…ねえ……」



ありがとね。
葉奈、ありがとうね────、


スパイの分際でなに言ってんだよ。


それも役作り?

俺の前に現れるメイドは、どうにも人をだまくらかす性分の人間ばかりらしい。



「おまえの目的なんか興味もないけど。面白そうだから高みの見物でもするよ」



なにを血迷ったのか、無防備すぎる寝顔に手を伸ばして触れてみる。

想像以上に柔い肌があって、俺は思わず恐怖のようなものを感じてしまった。



『ほんとうに本当にありがとう……!!ローレンのこともわたしのことも救ってくれたのは葉奈様ですっ!!』



あの瞬間、俺は俺として生きて、初めて許されたような気がした……なんて。

馬鹿馬鹿しい。


日暮 サナ。

俺はおまえみたいな奴がいちばん、虫唾が走るほど嫌いなんだよ。