日向家の諸事情ですが。

葉奈side




「─────……ハッ!!……はっ、」



悪夢だ。

これを悪夢と言わなかったら、なにを悪夢と言うのだろう。


金縛りから解けるような窮屈感で目が覚めた、3時02分。


自室内に置かれたブルーライトが照らされるアクアリウム。

エアレーションから噴出される泡を見ていると、だんだん今に感覚が戻ってくる。



「もう…居ないんだよあいつは。死んだんだ、もう終わったんだ……ぜんぶ」



こうして忘れた頃に見せてくる現実がある。
あれは夢でいて、そうじゃなかった。

俺を過去に今も縛りつづける現実だ。



「…へへ……、むにゃむにゃ…」



ほんと、呑気なヤツだよ。

俺が今ここで首を一気に絞め殺してしまえば2度と目覚めることはないというのに。


こうして夜更けに誰かの部屋へ向かって、本気で殺そうとしたことが過去に1度だけある。


見下ろした先に眠る女は、普段のメイド服を脱いでしまえば、ただのどこにでもいる少女だった。