それから母がこの世を去ってわずか1ヶ月後にメイドがひとり、屋敷から姿を消した。
表面上は解雇と言われていたが、実際のところは自ら命を絶ったのだ。
狂った期待と愛情を自分に向け、ときに母のような愛で包み込んできた女が……最後あんなにも罵倒してきた末、死んだ。
なんとも笑える話だ。
そして季節は流れ、高校入学手前。
『あんたが過去にメイドと不倫してたことを知ってるのは俺だけ。そのメイドが自殺したってことも。…そんなことが世間にでも知れ渡ったらどーなると思う?』
『葉奈…、馬鹿なことはやめるんだ』
『なら俺は好きに生きさせてもらうから。気が済むまでこの家を利用するだけ利用するし、尻拭いもすべてあんたにさせる。俺を平気で裏切った───……あんたらにだ』
その宣言どおり少年は金持ちばかりが通う名門校ではなく、ごく一般の私立高校を受験した。
それはもう身分を隠して好き放題。
徐々に家にも帰らなくなったが、金は有り余るほど誰かによって口止め料のような形で口座に振り込まれる。
好きな服を買い、適当に女と遊び、気に食わない人間には平気で手を上げる。
責任など持たない。
それはすべて長男の役目なのだから。
孤独な自由人。
これが日向家次男、日向 葉奈の───18年。



