日向家の諸事情ですが。





『つ、ツバキちゃん…』


『…あ!あなたはシキくんの……』



そこまで言って、水玉模様のカチューシャを身につけた少女は言葉が止まった。



『キャハッ!おとこおんな!変なの!』


『っ……、』



言葉の意味を理解して、ぶわっと羞恥心が追いかけてくる。


だんだん確立されてきた自我、プライド、感情。

11歳にもなって俺はなにをしているんだと、ようやく当たり前のことを思えるようになった。


なんだよこの格好……、
なんで俺はこんな格好をしてるんだよ。

ぜんぶ、ぜんぶ、あのメイドのせいだ。


おとこおんな────……。


そのとおりじゃないかと、笑えもしない。



『お、お父さんっ!!』



今まで避けていた父親に、初めて自ら声をかけた日。


助けてほしかった。
ただただ、助けて欲しかったのだ。


『自分のことを見て』などとはもう、言うつもりはない。

長男じゃなく次男。

その事実はどうひっくり返したところで変えられないのだから。


けれどこの家の主である男なら、自分の狂った人生を元に戻してくれるだろうと信じていたのだ。