『どうして旦那様があなたに“葉奈”と名付けたのか、知っていますか?それはね……男のあなたなど必要がないからです』
自分だけが、『はな』なんて名前。
自分だけが女の子のような名前。
兄も弟たちも、みんな男らしい名前を背負っているのに。
どうして自分だけ………。
『御曹司の年子など居ないも同然。跡取り息子は識様ひとりで足りているのです。いいですか葉奈お嬢様。あなたはね、女の子になる以外に価値はない人間なのですよ』
長男さえいればいい。
いずれ嫁をもらい、事業も家も両方を継ぐ人間は長男のみ。
たとえどんなに勉強ができたところで長男より前に出てはならない。
次男とは、長男が手にするものを指を咥えて見ている存在だ。
そんな彼女の洗脳染みた教えは、少女─少年─の心をカラフルなパステルから無機物な色に染めていくようなものだった。



