階段を上るたび、肺が少しずつ軋む。
屋上の重い扉を押し開けると、そこには、まだ熱を孕んだ風が吹き荒れていた。
「⋯⋯ふう」
フェンスのところまで歩み寄り、私は大きく息を吐いた。
ここからの眺めは、何も変わっていない。
遠くの街並みは陽炎に揺れている。
ふわりと、甘い香りが風に乗ってきた。
校舎の隅にある花壇で、園芸部が育てている秋の花の香りだろうか。
まだ夏の温かみを覚えている風が、私の髪を乱暴に撫でていく。
このフェンスを越えてしまえば、あのレントゲン写真の影も、母の涙も、全部消えてなくなるんだろうか。
私は、おぼつかない足取りで、フェンスに手をかけた。
その冷たい感触が、私の覚悟を試しているようだった。

