一時間目のチャイムが、遠くで鳴り響いた。
始業式のビデオ通話の音声が響く教室で、私はただ反対側の校舎を見つめていた。
学校に来たのは、お母さんに気を遣わせたくなかったから。
泣き疲れて眠った母の顔を思い出す。
私が「学校に行きたくない」なんて言えば、母はまた自分を責めるだろう。
だから私は、死の宣告を受けても、当たり前のように制服を着て、椅子に座っている。
でも、少し息が苦しい。
物理的な病状のせいだけじゃない。
この、何事もなかったかのように進んでいく時間が、耐えられなかった。
今から迎えを呼ぶのも、迷惑だよね。お母さん、やっと少し落ち着いたところだし⋯⋯。
先生がどこかへ行った隙に、私は音を立てないように教室の後ろの扉を開けた。
廊下には、誰もいない。
先生がいなくなり騒々しさが戻った教室から、ゆっくりと足を踏み出した。

