奏斗は穏やかな寝息をたてていた。
自分を襲う違和感と、これ以上ない桜と血のような匂いが混じった香りが部屋中を埋め尽くす。
痛みはなく、ただ何かに包まれているような優しい感覚だった。
少しずつ動きを止めている心臓とともに、世界の流れがゆっくりになっていた。
指先の感覚がなくなり、息をしているのかどうかですら、不確定へと変わっていく。
それでも奏斗のそばにいたくて、頬を擦り寄せた。
自分の死が目の前にあることよりも、
大好きな人の死も近くにあることが怖かった。
でも、抵抗はおしまいになる。
この温もりが永遠になる。
「⋯⋯大好きだよ奏斗」
その永遠を抱きしめながら、私は穏やかな気持ちで目を閉じた。

