「奏斗の笑ったときの表情、私も好きだよ」
私は、彼の頬に手を添えた。
奏斗は、カメラをそっとベッドの上に置くと、私の手を自分の両手で包み込んだ。
「⋯⋯うん。⋯⋯咲菜と会えて、よかった。⋯⋯咲菜と一緒に、笑えてよかった」
急に、ひどい眠気が私を襲った。
それは、抗いがたい誘惑。
私の中から溢れ出す桜の香りが、もう部屋を完全に満たし、夜風さえも甘く染め上げている。
「⋯⋯奏斗。⋯⋯ちょっと、眠くなっちゃった」
「⋯⋯僕も。今日は、いっぱい笑ったからかな」
奏斗は、私のベッドに潜り込むようにして、隣に横たわった。
狭いシングルベッドの上で、私たちは互いの心臓の音を確かめるように、深く、深く寄り添った。
奏斗の体からも、私と同じ、満開の桜の香りがする。
「咲菜。⋯⋯おやすみ」
「⋯⋯うん。⋯⋯おやすみ、奏斗」
私たちは、繋いだ手を離咲菜いまま、ゆっくりとまぶたを閉じた。

