死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



アイスを食べ終えたはずなのに、私たちの足は吸い寄せられるように一階のお菓子ショップへと向かっていた。

​「⋯⋯先輩。さっきアイス食べたばっかりなのに、またお菓子見るんですか? 本当によく食べますね」


「いやあ、見てよ咲菜。この海外のグミとか、チョコとか。お正月休みを彩るには、食料の備蓄が不可欠だろ?」


奏斗先輩はカゴを片手に、まるでおもちゃ箱をひっくり返す子供のような目で棚を物色している。

私は呆れ半分、可笑しさ半分でその後ろをついて歩いた。


すると、先輩が「あ、これこれ」と言って、細長い箱に入った『ショコラスティック』を手に取った。


​「これ、めちゃくちゃ美味いんだよ。咲菜も好きだろ、チョコ」


「⋯⋯まあ、嫌いじゃないですけど」


「よし、買いだ。これ二箱ね。あとこのポテトチップスも」


​結局、カゴの中はあっという間に先輩が選んだスナック菓子でいっぱいになった。


会計を済ませて店を出ると、先輩は早速ショコラスティックの箱をバリバリと開け、一本取り出して私の口元に突き出した。


​「ほら、食べてみて。これ、中のクッキーがサクサクで最高だから」


「えっ、ここでですか? ⋯⋯じゃあ、いただきます」


​私は遠慮なく、差し出されたスティックを一口齧った。
先輩の言う通り、濃厚なミルクチョコの中から香ばしいバターの風味が広がる。

私はその食感を楽しみたくて、サクサクと少しずつ食べ進めた。


「⋯⋯ん、本当だ。美味しいです、これ」


「だろ? ⋯⋯あはは、咲菜、それ」


​不意に、隣で先輩が吹き出した。


「何ですか?」


「いや、なんか食べ方がリスみたい。頬袋に溜め込んでるみたいで面白い」


「なっ⋯⋯! リスって、失礼ですよ。一生懸命食べてるだけなのに」


私が頬を膨らませて抗議すると、先輩は「ちょっと待って、動かないで」と言いながら、素早く首から下げていたカメラを構えた。


​カシャッ。


​乾いたシャッター音が、ショッピングモールの通路に響く。


「!また撮りましたね! 先輩、今絶対変な顔してましたよ、私!」


「変じゃないって。ほら、見てよこれ。めちゃくちゃ傑作」


​先輩がカメラの液晶画面を見せてくる。
そこには、ショコラスティックを咥えたまま、目を丸くして驚いている私の姿が映っていた。

確かに、ちょっとだけリスに似ているかもしれないけれど⋯⋯。


​「消してください! 恥ずかしいです!」


「やだね。これは僕の宝物リストに追加。⋯⋯ん、かわいい、かわいい。本当、咲菜は撮り甲斐があるなぁ」


先輩は満足げにカメラをしまうと、今度は自分の口にスティックを放り込んだ。


「⋯⋯かわいいなんて、適当に言わないでください」


「適当じゃないよ。本気。咲菜が美味しそうに食べてると、僕まで幸せな気分になるんだ」


​そう言って、先輩は私の頭を優しく撫でた。
手に持ったショコラスティックの甘さが、胸の奥まで溶け出してくる。


撮られた写真は恥ずかしいけれど、彼のカメラの中に、私の生きた時間がまた一つ刻まれたことが、少しだけ誇らしくもあった。


​「じゃあ、お返しに私も先輩の変顔撮りますからね!」


「お、いいよ。変顔のレパートリーなら、サッカー部で鍛えられてるから」


​私たちは笑い合いながら、冬の光が差し込むモールの中を歩き続けた。