死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



ショッピングモールに足を踏み入れると、神社の静寂が嘘のような喧騒と、暖房のぬくもりが私たちを包み込んだ。

色とりどりの新春セールの看板や、福袋を抱えて歩く人々の熱気で、
冬の寒さは一気に遠のいていく。


​「⋯⋯ふぅ、生き返った。やっぱり冬は屋内だね」


「本当ですね。あ、先輩、見てください! あそこ」


​私が指差したのは、フードコートの一角にある、パステルカラーの装飾が目を引くアイスクリームショップだった。


「あ、例の店だ。本当に食べていく?」


「もちろんです! 冬に食べるアイスが贅沢だって、言ったのは先輩じゃないですか」


​私たちは券売機の前に並んだ。
色鮮やかなフレーバーが並ぶ中、私は迷わずストロベリーを選び、奏斗先輩は期間限定のベルギーチョコをセレクトした。


「はい、お待たせ。こぼさないようにね」


先輩からトレイを受け取り、私たちは窓際のカウンター席に座った。

目の前には、さっきまで私たちがいた神社の森が、雪に白く霞んで見えている。


​「⋯⋯ん! 美味しい! 冷たいけど、すごく濃厚です」


「でしょ? 暖房の効いた場所で食べるアイスは」


​先輩は器用にスプーンを使い、私の口元に自分のチョコ味を運んできた。


「ほら、一口。これ、かなりビターで美味しいよ」


「あ⋯⋯ありがとうございます」


​不意打ちの「あーん」に、私は顔を赤くしながらも、その冷たい甘みを口に含んだ。

「⋯⋯美味しい。でも、先輩、口の端にチョコ付いてますよ」


「え、どこ?」


私が指差すと、先輩は「あはは」と笑いながら指で拭った。
その無邪気な仕草を見るたび、胸の奥の蕾が、痛みとは違う熱を持っ
て疼いた。