死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



神社の境内に舞い始めた雪は、いつの間にか本降りになり始めていた。

奏斗先輩は、まだ少しだけ納得がいかないというように、結び所の白い紙の列をじっと睨んでいる。


「⋯⋯やっぱり、納得いかない。僕が凶で、咲菜が中吉なんて。せめて逆なら、僕が咲菜の悪い運勢を全部背負ってあげられたのに」


「もう、先輩。そんなに気にしないでください。おみくじは、今が一番悪いってことは、これから運が上がるだけって意味なんですから」


私が苦笑いしながら彼の袖を引くと、先輩はようやく溜息をついてこちらを向いた。


「⋯⋯咲菜は、大人だね。僕の方が年上なのに、完全に諭されてる」


参道を下りながら、私たちは並んだ屋台の列を眺めた。
たこ焼きのソース、綿あめの甘い香り。

お正月独特の活気が、冷え切った空気をほんのりと温めている。

けれど、雪脚が強まるにつれて、外に居続けるのは少し厳しくなってきた。

私の鼻先も、きっと寒さで赤くなっているだろう。


​「このまま外にいると凍えちゃうな。ねえ、咲菜。この後、のショッピングモール行かない?」


「ショッピングモール、ですか?」


意外な提案に、私は目を瞬かせた。
てっきり、今日はこのまま解散か、どこか静かなカフェにでも入るのかと思っていたから。


​「うん。咲菜に何か似合うもの選んであげたいし」


「えっ、いいですよ、そんな! 買ってもらうなんて⋯⋯」


「いいの。僕の気が済まないから。凶を引いた厄落としに、大好きな子にプレゼントさせてよ」


先輩はそう言って、私のマフラーを少しだけ整え直した。
彼の指先が頬に触れるたび、寒さとは別の熱が顔を出す。


​「⋯⋯じゃあ、見るだけ、ですよ?」


「あはは、善処します。行こう、バス停あっちだ」


​私たちは足早に駅前のバス停へと向かった。
ショッピングモール。

家族連れや中高生で溢れる、ありふれた日常の象徴のような場所。


バスの窓から見える景色が、雪の白に覆われていく。 


「あ、そうだ。あそこのフードコート、新しいアイスクリーム屋さんが入ったんだよ」


「え、この寒いのにアイスですか?」


「冬に食べるアイスが一番贅沢なんだって。咲菜、何味が好き?」


​そんな他愛もない会話をしながら、私は次の目的地へと向かうバスの中で、隣に座る先輩の肩にそっと頭を預けた。