死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



二組のブックカフェにたどり着くと、そこは戦場のような忙しさだった。


「小倉さん! 助かった、人足りないの! すぐこれ着て!」


​委員長に押し付けられたのは、真っ白なエプロンだった。


でも、ただのエプロンじゃない。
肩に大きなフリルがついていて、裾にもレースがあしらわれた、やけに可愛いやつだった。


​「⋯⋯これ、着るんですか?」


「それしかないの! 早く!」


断る間もなく着用させられ、鏡を見た。


絶対、似合ってない。こんなの、誰にも見られたくない。

私はせめてもの抵抗として、人前に出る接客ではなく、奥の皿洗い担当に回らせてもらった。


ごしごしとカップを洗っていると、背後で足音がした。


「おっ、頑張ってるね。皿洗い係?」


振り向くと、そこには文化祭とロゴが入ったキャップを深く被った瀬口先輩が立っていた。


「先輩!? なんでここに⋯⋯。っていうか、その帽子、何ですか」


​「これ? 運営委員から借りた。変装だよ。女子たちがうるさいからさ、隠れて来た」


先輩はニカッと笑ってから、私の姿を上から下までじっくりと眺めた。


「⋯⋯へぇ。そのエプロン、フリフリですごいね」


「⋯⋯っ、見ないでください! 似合ってないの分かってますから!」


私が顔を伏せて隠れようとした時。
先輩が、そっと私の頭に手を置いて、耳元で囁いた。


​「⋯⋯かわいいねぇ、咲菜ちゃん。想像以上だよ」


「⋯⋯!? 」


顔が沸騰しそうだった。
先輩は私の動揺を楽しむように、悪戯っぽく目を細める。


「ねえ。皿洗いなんて後でいいじゃん。せっかくの文化祭、一緒に回ろうよ」


​差し出された彼の手。


「先輩ってチャラいですよね⋯⋯すっごく。めっちゃすっごく」


「褒め言葉?語彙力消えかけてるけど」


エプロンを脱いで畳み、手をぎゅっと握りしめた。