死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



​家に帰り、母に心配をかけないよう早めに夕飯を済ませて自室にこもった。
​鈴からのメッセージはそれでも止まらなかった。


​『で、結局どうなの!? 瀬口先輩と何してたの?』


『てか、先輩サボりばっかで大丈夫なのかな。三年生なのに』


私はベッドに寝転がりながら、どうにかこうにか話を変えた。


『スポーツ選抜だし、もう進路決まってるんじゃない? だからいいんだよ、きっと』


『たしかにそうかも? 才能ある人っていいよね。でも咲菜、あんまり振り回されないようにね!』



おやすみ、とスタンプを送ったあと、突然「新しい友達」の通知が届いた。


​『追加しました:瀬口奏斗』


​「え、なんで⋯⋯」


​驚いている間もなく、画面が光る。


​『お疲れ。よく眠れた?』


『鈴ちゃん経由でIDもらったー。勝手に追加してごめんね』


鈴ったら、あんなに騒いでいたのにもう教えてるなんて⋯⋯。
私は溜息をつきながら、震える指で返信を打った。


​『鈴には明日しっかりお説教しておきます⋯⋯。あの、保健室にいたんですけど、運んだのだれですか?』


数秒後、既読がつく。


​『んー? 誰だろうね。通りすがりの親切な先生じゃない?』


『⋯⋯嘘ですよね』


『あはは。まあ、お休み、咲菜ちゃん。明日も屋上で待ってるよ。鍵、ちゃんと借りておくから』


画面越しの彼の声が聞こえてくるようだった。先生じゃないことくらい、本当はわかっている。


​『そういえばさ、十月の文化祭。咲菜ちゃん、一緒に回らない?』


『⋯⋯行けたら、行きます』


『あ、それ絶対来ないやつじゃん(笑)』


『違います。本当に、行けたら行きます、です』


『まあいいけどさ。楽しみにしてるよ。うちのクラスはお化け屋敷とか、飲み物管理やるらしいんだ。咲菜ちゃんのところは何やるの?』


『まだ詳しく決まってないですけど⋯⋯多分、カフェとかじゃないですか?』


『え、店員の服とか着るの? メイド服とか?』


『着ません』


『えー、咲菜ちゃんの店員姿、見たかったなー』


​⋯⋯やっぱ変態だ、この人。


そう打ちかけて、慌てて消した。


『変なこと言ってないで、早く寝てください。おやすみなさい、瀬口先輩』


『おやすみ、咲菜ちゃん。いい夢見てね』



返信を送って、私はスマホを胸に抱いた。

病気の宣告を受けてから、初めて明日が来るのが少しだけ待ち遠しいと思えた。