死にゆく私は、桜の世界で二度と散らない恋をした。



ふわりと、鼻腔をくすぐる石鹸の匂いで目が覚めた。


視界に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではなく、白いカーテンに仕切られた無機質な空間。


「⋯⋯ここ、保健室?」


上体を起こすと、心臓がトクンと小さく跳ねた。
痛みはない。ただ、長い間深く眠っていた後のような、奇妙な浮遊感がある。


最後に覚えていたのは、屋上で瀬口先輩とトランプをしていたこと。
いつの間にか寝入ってしまった自分の無防備さに、顔がカッと熱くなる。


その時、制服のポケットの中でスマホが震えた。
取り出すと、鈴からのメッセージが画面を埋め尽くしている。


​『咲菜! どこにいるの!?』


『さっき三階の廊下で、瀬口先輩に運ばれてるの見たって子がいて大騒ぎだよ!』


『ねえ、先輩に呼ばれてたよね!? 二人ってどういう関係なのー!?』



心臓が口から飛び出しそうだった。質問攻めの通知を見つめながら、私は頭を抱える。


あんなに目立ちたくないと言ったのに、瀬口先輩は平気で私の平穏を壊していく。


『今保健室だから、家帰ったら話そ』


恋バナ女王の鈴の質問攻めを受けることは諦め、保健室の先生に一例してから、帰宅した。