私のcolor

「えぇぇぇぇぇ!私が特別寮に入るんですか⁈冗談ですよね???」

「もう寮行きの車に乗ったのに、それかよ。雫は何も分かって無いな」

す、すみません!お辞儀してから、ぎゅっと目をつぶる。

「はは、そのリアクション面白いな。……俺も、特別寮に今日から入る。一緒だな」

「こ、こっちは、大大大パニックです‼︎ほ、他の子にすればいいんじゃ……」

切れ長の目を少し丸っこくして、私の言葉を遮り、一条さんはゆっくり言った。

「雫を他のヤツに取られちゃ、俺は嫌だからな……」

「ヒェ。怖い……」

一条さんは「あ、悪い。ちょっと調子乗りすぎた。ごめんな」。

「あの、もう一つ聞きたいことがありまして。一条さんの都合だけじゃないですよね」

「俺の都合だけじゃない。ちゃぁんと理由はあるんだから。まあ、俺も、正直分かってないけど、雫が、学校の、『偉い人の娘』らしくてな。雫の親の名前は?」

「菊林澪(母)と菊林虹斗(父)です」

こ、答えちゃった……言わないようにって言われてるのにな。でも、流石に年齢までは言ってないし、大丈夫か。

「SPYによると、雫の両親、どっちも、『特別寮担当教職員』らしいよ。雫、知ってたか?」

「(SPY?何ですかそれ?)全然知りません!あの、思ったんですけど、自分の親の職業が分かってないなんて、結構、私、変ですね……」

「俺もよく分からない」

不思議な空気が流れている中、車はのんびりと進んでいた。


らいちょう城に、着いた。

「あ、着いたぞ。今度、この話しような」

「はい」

す、すごい。綺麗……。緑の森に囲まれ、静かに聳え立つ城のような寮に、私は目を丸くする。

「特別寮。この寮、らいちょう城って呼ばれてるんだ」

「へ、へぇ……」

私はこの寮にも負けない美しさとかっこよさを見せる一条さんって、すごい、本気でそう思った。

「じゃあ、行こうか」

どう見ても大きすぎる寮(城)を前に、私は足がすくみ、動けない。私のような者が、入ってよろしいのでしょうか……。

「どうしたんだ」

「い、いえ……。めっちゃ怖いですけど、行きます」

一条さんは、一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの顔に戻った。

「怖いって、何がだよ。あ、この大きさか?大丈夫、すぐに慣れるって。てか、俺も初めてなんだけど。さ、行こ」

私の心の中を見抜いた。この人、もしや超能力者?なんて考えていると、私は彼に手首を掴まれた。そして、城に入った。

「うわぁ……!圧倒されますね、この美しさに!」

「学校のホームページで一応見てみたが、他の寮とは段違いの豪華さだな」

私達二人がキョロキョロしていると、

「あ、いた!やっほー、一条さんとそこの女の子♡」

中学生にしては高い声の主は、愛称『ゆーま』_星里優馬さんだ。その可愛さに、ほんわかイケメンに疎い私でも聞いたことはある。そして彼は、一条さんを見つめ、ほんわか笑う。

「……星里、うるさい。一条、そこの女は誰だ」

と普段一匹狼の御子柴雷音さんが低くも凛とした美声で言う。

「まあ、星里と御子柴だけなら言っていいか。この子は、菊林雫。色々あって、なぜか特別寮に入ることになったらしい」

「「そうなのかっ……」」

なぜか星里さんと御子柴さんは、顔を赤くしている。

一条さんは何か悟ったらしく、「はぁ」とため息をつく。

「お前らも、雫のこと、好きなんだろ」

「「当たり前だろ」」

えっ。……。そうなの、ですか?ど、どうしよう。これじゃあキラキラ男子3人にめちゃくちゃ接近されるよ……!

「大丈夫だよ。雫は、いつか、俺だけを見つめるようになるしな」

???

「あはは〜、一条さんは抜け駆けで彼氏です♡アピールするの?大胆に目立つのもいい加減にしてほしいな〜♡大体、こんな人には誰でも離れていくでしょ〜」

と、笑顔で毒を吐いている星里君に、

「……ちっ。ま、一条、お前が彼氏だとしても、『現在は』だろ。いつかは彼氏なんて変わるもんだろ」

と、御子柴君は呆れる。

「嫌われるのは確定です、みたいに話すな」

「あ〜、でも運命は変えられないんだよね〜。この僕、優馬が一番、愛されるっていう未来は、変わんないけど」

「優馬、うっさい!未来は、変えられるんだっつーの。俺という、良い方向に」

わっっ。どうしよう、険悪な雰囲気になってきたよっ。

「み、皆さん。ご飯にしましょう!もう、……7時なので……」

「……」

あ、ちょっとまずいこと言ったかな、私。

「そうだね〜。ねえねえ、雫ちゃん、手料理作ってよ〜♡」

「私の手料理……。ハンバーグとかで良いですか」

みんなが一斉に頷く。良かった。

「楽しみだな。雫との、最初のご飯を、雫に作ってもらうなんて悪いけど」

「全然そんなことありません!私の料理を、皆さんに、食べてもらうことが、最高だと思っています!」

そうすると、御子柴君がクスッと笑う。

「そうか。ありがとうな。俺も手伝うから、遠慮なく声かけてな」

はい……。御子柴君が見せる笑顔は、すっごく貴重だ。でも、こうらしい。「こんな笑顔、雫にだけしか見せねぇからな」。

「はいはい〜。僕も♡」

星里君はいつも通りたくさん甘えてきてくれる。弟がいるみたいで、兄と姉しかいない私にとっては嬉しいな。

一条さんはというと、やや顔を赤くし、苦笑いして、こくりと頷いてくれた。


そして作り終えた、4人のハンバーグ。

こうしてみんなで食卓を囲めて、他愛無い話をたくさんして、やっぱり楽しい。自分でも頬が緩んでるって感じる。

すると、御子柴君が、食事の途中に、こんなことを言ったんだ。

「おい、雫はさ。雫は、誰が一番好きなんだ」

「私が、好きな人……。湊君と、優馬君と、雷音君です。みんな、私を気にかけてくれて、優しくしてくれて。3人とも、大好き」

わ、私が告白?した……。だけど、まだ告白には程遠い。だって、これは、恋じゃなくて愛だから。

一条さんは、なぜかハンバーグを食べる手を止め、凝視してくる。

星里君と御子柴君も私をまじまじと見つめる。

「微笑んでるのが可愛すぎる♡」

「マジ、美人だ」

「雫は、こんなにも可愛いんだな。絶世の美女だよ」

そ、そんな風に言われても……。困りますっ!

「ええと、それはありがたいですが、し、心臓が爆発しそうです!」

「俺が雫を守るから」

「俺だよ!」「お前は違うだろ!」なんていう言い合いが続く。

「じゃあ、誰が一番雫を守れるか、勝負だ」

ショウブ?マモレル?

「……この話を話題に出したのは、その、……、誰が一番、雫に愛されて、雫を愛してるか、知りたかったんだよ、俺」

私にはさっぱり言葉の意味が分からないけど、「は、はいぃ……」ととりあえず返事だけした。

「「確かにね」」

御子柴君と星里君は、そろって返事をした。

「じゃあ、こうしよう!」

一条さんは何か思いついたようで、私たちにこそこそ話してきた。内容は、短くまとめると、こんな感じ。

[私(雫)に一番愛され、一番愛する人。それが、3人のトップ。]

3人なら別にトップ(リーダー)なんて決めなくて良いんじゃ?って考えたけど、みんな真剣に話していたので、やめた。

「じゃあ、これで決まりにする。雫、異論は無いな」

「はっ、無い、で、す」

ということで、そう決まっちゃった!

〈それからのてんやわんやな日々を、次の章でお伝えしていきます〉