その恋、両思い未満

もえに呼ばれた通り、もえの前、ソファの足元に座った。


「なぎ、髪伸びたね」
「うん」
「ショートボブみたいな感じやめたの?」
「あれから一回もバッサリきってないからね」


濡れた自分の髪を見る。
腰のあたりまで伸びた私の髪。
ママもこんな感じだったなと思って、切ることができなくなってしまった長い髪。




「似合ってるね、可愛い」





可愛い。


かわいい?


……あれ、そんなこと言う人だっけ。


何もなかったみたいにドライヤーの風を私の頭に当てる。


髪を梳いていく、私と違う指先。
指の腹は私より少し硬くて、だけど細くて長い。
私の頭に優しく触れて、髪の間を縫っていく。


温かい風を浴びながら、悶々としてきた。


そもそももえとは、とても仲がいいかと聞かれればそんなことはなかった気がする。
家族ぐるみでお出かけする休日、といったものはあったかもしれないけれど、普段は学校でしか会わない。
学校ではずっと一緒だったような気も、するけれど……。


だからってお互い能動的な方ではなかったし、休みの日にあそびを取り付けたことはなかった。