その恋、両思い未満





「ただいま」


玄関のドアを開けて、声をかけるとパタパタとスリッパの擦れる音が聞こえて、リビングからもえが顔を覗かせた。


まだ制服も、髪のセットもそのまま。
コンタクトは外してメガネの、ちょっとしたあべこべ感はあるけど、十分、


心臓に悪い顔。


「おかえり。大丈夫だった?」
「うん?なにが?遅かった?」
「うん」
「別に何にもないよ。お茶してただけ」


もえにはちゃんと連絡していた。



後ろの席の子とお茶してきます



って、ちゃんと送った。
足りなかっただろうか。


「ご飯食べれる?」
「うん。特にこれと言って何も食べてないよ」
「今日は牛丼の気分だったんだよね」



いい匂いがしてます、すでに。



「制服脱いでくるよ」
「ちょっと待って。なぎの制服姿、母さんに送りたい」
「え?あ、うん。まあ……」


いいけど、という前に玄関へ押し戻されて靴を履き直した。


少し高さのある黒ローファー。


最新のスマートフォンのカメラが私に向けられて、とりあえず前髪を整えてピースしてみる。


パシャ、と一枚撮ったかと思えば連写の音が聞こえてきて、満足そうに笑った後、もえはこちらを向いた。