その恋、両思い未満

少しだけ口角を上げて微笑むもえは既に制服姿だ。
ワイシャツにベスト、ジャケット姿。


「正装はベスト必須?」
「そ」


かわいいよね、と前を開けて見せてくれたのは白チェックのベスト。


スリーピース、いいな。
流石の顔も相まってキマってる。


ここ1週間では一回もしていなかった髪のセットもちゃっかり。
普段よりしっかり前髪をかき上げて、固めてある。


メガネも。
今日はかけてない。
コンタクトでもしたんだろうか。


それにしたって。
……かっこいいな。


こんなの、ドキドキして当たり前だよね。
私の胸も暴れちゃうよね。



ネクタイ結んでもらって勿体無いよ。
恐れ多いくらい。



この人の隣にいたら絶対視線を浴びる。
学校では近づかないでおこう。
女の子少ないって言ったって、いないわけじゃないから。



「それで行くの?」
「へん?」
「いや、いいと思う。モテそう」
「確かに」


入学式だから、ちゃんとした方がいいかと思ったんだけど、と呟いて私の映る姿見を覗き込んだ。


「流石にやりすぎ?」
「雑誌でしかそんなキマってる人見たことない」
「……褒めてる?」
「めちゃくちゃ」