その恋、両思い未満

その日の夜、初めて父さんに家を出ることを話した。


「お前、まだあの家の子どもと」
「いいじゃない、別に。夕花があなたに何の迷惑をかけたって言うの?」


惚れた弱みなのか、父さんは母さんにスパッと言われると、黙る。
それを母さんも知っているから普段は基本的に慎ましくして、父さんの気持ちを優先してあげているけど、今回は俺の味方だった。



そんな日々があって、無事、なぎとの同居が始まった。


困ったことといえば、なぎが信じられないくらい可愛くなっていたことだった。
確かに、夕花さんの顔立ちを思えば絶対に美人に仕上がるしかないなぎは、予想通り美人だった。


高校生なのに憂いを帯びている、どこの国のお姫様ですか?と思わせるような佇まいから、艶のある長い髪、この子のために人間は目と鼻と口で顔を構成することにしたんだと言われても納得いくような完成度。


どこをとっても隙がなかった。


いや、厳密に言えば、押し倒されてる感じ、隙だらけなんだけど。


そんな隙のせいで、今俺はとても悩まされているんだけど。


「夜、寝れなかった?」
「うん。慣れなくて」


昼間から、よく分からないテレビ見てるな、と思って近づいたら、うとうとしていた。
どうやら、お目当ての番組は終わっていてそのままチャンネルを変えていないだけだったみたい。