その恋、両思い未満

今日1番の饒舌を引き出してしまった。
独り言を言うみたいにぶつぶつと早口で呟いていた。


それが少しずつ、私に向けられた言葉に変わっていって、パチリ、と目が合った。
ここまで伏し目がちだった目が、私の目を捉える。


私の手を握っていない手で、もえは眼鏡を外した。


ツラがいいなと、感心してしまう。
大人になってこんなに綺麗な顔になるのは、完全にもえママの血を引いたんだと思う。


パパさんは、もっと濃い顔で、ヤクザみたいな人だから。イケオジの様相だけど、あまりにもいかつい。


「男と住むとこう言うことも起こりうるってこと」





───ん、?



気がつくと、私はソファに押し倒されていた。
少し座面の広いソファは、背もたれが倒れて人が寝れる形になっている。
さっきまでソファとしての様相を守っていた家具に、私は手を押さえつけられて、身体を沈めている。



「も、え?」
「怖い、でしょ?男と暮らすってこう言うこと。


なぎは俺と住むの本意じゃなかったかもしれないけど、今更出て行く選択肢、ないでしょ?
だから、できるだけ、こうならないよう、ちゃんと線引きしていこうって、俺は言いたいんだけど……」