星名くんとの天文部の活動も、五日目をむかえた放課後。
私たちは屋上にレジャーシートを広げてそこに腰をおろしていた。
ひざにはブランケットをかけて、手元にはあたたかなココア。
そうしてもう片方の手には、双眼鏡を持っていた。
「あ、見て! あれがおとめ座のスピカだよ」
「え? おとめ座? 私、おとめ座だよ! この時期に見えるんだねえ」
「ちなみにその隣の星座が、しし座だよ。俺、しし座なんだ」
「え! そうなんだ! お隣さんだねっ」
「うん、そうだね!」
そんな話をしながら、二人並んで星を見る。
静かな夜に、少し冷えた空気。あたたかなココアと、頭の上でキラキラとかがやく星たち。
「天文部も楽しいなぁ……」
これまでもいろんな部活動の体験をしてきたけれど、どれも本当に楽しかった。
それぞれの好きって気持ちも、先輩たちの楽しそうな笑顔も、体験してみてはじめて知ることができた。
星名くんは私の顔をのぞきこんで尋ねる。
「どう? 部活、決まりそうかな?」
「うーん……」
写真部、文芸部、放送部、軽音楽部、そして天文部。
どの部活動も本当に楽しかった。
でもやっぱり、一つに決められない。
どれも楽しかったはずなのに……。
私が悩んでしまったのを見て、星名くんはぽつりぽつりと話し出す。
「俺、小さい頃から星が大好きなんだけど、それは父さんの影響も大きくて」
「え?」
「小さい頃に、よく天体観測に連れて行ってもらったんだ。もちろん家からも見てたんだけど、少し開けた原っぱとか、丘の上の方とか。いろんなところから星を見て、いろんな星の話を聞いた。そうしたらすっかり星のことが好きになっちゃって」
私は静かに星名くんの話に耳をかたむける。
「俺の父さん、この学院の卒業生で、天文部だったんだ。だから、父さんの思い出の天文部をなくしたくなくて、一人でも活動しようって決めたんだ」
「そうだったんだ……」
だから星名くんは入学してすぐ、ときめき部の天文部に入部を決めたんだ。
一人だったとしても、天文部を存続させたかったんだ。
「咲森さんはどう?」
「え?」
「難しく考えなくていいんだよ。自分がちょっと気になるな、とかこういうもの好きだなとか、もっと知ってみたいな、って思うこと、あるんじゃない?」
「え……?」
私の好き……?
私は顔を上げて、星空を見つめる。
真っ青な海に、きらきらした黄色い花がたくさん咲いているみたい。
そこでふと頭の中をよぎったのは、中庭にある、温室のことだった。



