「綺麗だと思ったんだ……あの日の海みたいに、夏井のことをずっと見ていたいって思った」
私は何も言えなかった。
言いたかった言葉を、先に全部もらってしまった気がした。
涙が出そうになるくらい嬉しくて、それなのに胸が苦しい。
「……晴海は、もう十分だと思う」
やっと出た声は、少し震えていた。
視線を海に戻したまま、言葉を探す。
「少なくとも、私の目には」
晴海が少しだけ息を止めた気がした。
「……ねえ」
私が先に、息を吸った。
「海みたいに、いつもそこにいなくてもいい」
視線は水平線のまま。
「でも、振り返ったときに、晴海がいたらいいなって思う」



