何度も頭の中で繰り返した言葉だった。
帰り道でも、家でも、眠る前でも。
もし言うなら、ちゃんと伝えようと思っていた。
晴海がどんな答えをくれるとしても、逃げたくなかったから。
でも、私が次の言葉を探していると、晴海が小さく息を吸った。
「……夏井」
その声が、いつもより少しだけ震えていた。
「ごめん。先に言ってもいい?」
思ってもいなかった言葉に、私は目を瞬かせる。
「え?」
晴海は困ったように笑った。
「本当は、俺から言うつもりだったんだ」
夕暮れの海を見ながら、晴海はゆっくり言葉を続ける。
「でも、ずっと迷ってた」
その横顔は、いつもの晴海とは少し違って見えた。
「言ったら、今の関係が変わるかもしれないって思った」
胸の奥が小さく痛む。それは私も同じだったから。



