無理に聞こうとしないところも、晴海らしかった。
相手が言いたくないことを、無理やり引き出そうとしない。
そういう優しさを、私は何度ももらってきた。
海が近づくにつれて、少しずつ潮の匂いが混ざってくる。
懐かしい匂い。ひまわり畑の日も、最後に海を見た日も、同じような風が吹いていた。
「着いた」
晴海が小さく呟く。目の前には、夕日に染まった海が広がっていた。
昼間の青とは違う、柔らかい色をした海。
波が静かに砂浜へ寄せては返している。
その景色を見た瞬間、胸の奥にしまっていた思い出が一気に蘇った。
球技大会の日。
晴海は、私とハチマキを交換したいと言った。
あのときのドキドキを、今でもずっと覚えている。
初めて放課後、一緒にテスト勉強した日。
なんで勉強相手に私を選んでくれたのか、怖くて聞けなかった。
花火大会の日。
大塚くんとはぐれて、不安だった私の前に現れた晴海。
あの時は偶然だと思っていた。
でも、今は違う。
もしかしたら、あの日から晴海は私のことを見ていてくれたのかもしれない。
ひまわり畑で見せてくれた笑顔も。海で聞いた優しい言葉も。
全部、私にとっては特別なものだった。



