海へ向かう道は、思っていたよりも静かだった。
夏休みの頃なら、夕方でも海へ向かう人や自転車の音で賑やかだったはずなのに、季節が少し進んだだけで、街の空気はどこか落ち着いていた。
隣を歩く晴海は、いつもと変わらない様子だった。
時々、道端の景色を見たり、くだらない話をしたり。
その無防備な横顔を見るたびに、胸の奥が苦しくなる。
もし、今この関係が変わってしまったら。もし、晴海が私と同じ気持ちじゃなかったら。
そんな不安が何度も頭をよぎる。
でも、それ以上に思うことがあった。
このまま何も伝えないまま、晴海が遠くへ行ってしまう方が嫌だった。
「夏井?」
突然名前を呼ばれて、顔を上げる。
「なに?」
晴海は少し笑った。
「いや、さっきから静かだから」
図星。いつもなら、晴海の話に笑ったり、くだらないことで言い返したりしているのに、今日はどうしても上手くできない。
「ごめん、ちょっと考え事してた」
そう言うと、晴海は「そっか」とだけ返した。



