晴海は少し驚いた顔をしたけれど、すぐに柔らかく笑った。
「あるけど、どうした?」
その笑顔に、一瞬だけ言葉が詰まる。
本当は今すぐ言いたい。
好きだって。
ずっと大切だったって。
離れたくないって。
「……海、行かない?」
口にした瞬間、自分でも驚いた。晴海も少し目を丸くする。
「海?」
「うん。なんとなく……行きたくなって」
「……いいよ。行こうか」
教室を出ると、夕方の光が廊下に差し込んでいた。
夏の終わりの光。
少し寂しくて、それでも優しい色。
並んで歩く廊下は、いつもと同じはずなのに、今日は特別だった。
もしかしたら、この帰り道が最後になるかもしれない。
そんな考えが一瞬浮かんで、すぐに首を振る。
違う。終わりにするためじゃない。
ちゃんと始めるために、私は今日ここにいる。



