「そう?」
「うん。珍しい」
晴海はそう言って笑った。
その笑顔を見て、改めて思う。
やっぱり、晴海がいい。
何気ない仕草も、優しい声も、全部大切だと思えるくらい。
だからこそ、伝えたい。
このまま何も言わずに、時間だけが過ぎてしまう方が嫌だった。
「晴海」
気づけば、名前を呼んでいた。
「ん?」
晴海が顔を向ける。その瞬間、言おうと思った。
今日、放課後時間ある?
でも、教室にはまだたくさんの人がいる。周りの声が聞こえる中で言う勇気はなかった。
「……いや、なんでもない」
また逃げた。
そう思って少し落ち込む。でも、晴海は不思議そうにしながらも、それ以上は聞かなかった。
放課後なら。
二人きりなら。
ちゃんと言える気がした。
そして、あっという間に時間は過ぎていった。
授業中も、休み時間も、頭の片隅にはずっと同じことがあった。
放課後。
晴海を海に誘う。
たったそれだけなのに、告白よりも前のその一言が、今の私には一番大きな壁のように感じた。
でも、窓の外を見ると、空はあの日の海の日と同じくらい綺麗な青色をしていた。



