教室に入ると、すでに何人かのクラスメイトが来ていた。
その中に、晴海の姿はまだなかった。
少しだけほっとして、少しだけ残念に思う。
自分でも単純だと思う。
会いたいのに、会ったら緊張する。
そんな矛盾した気持ちを抱えながら、自分の席に座った。
しばらくして、後ろのドアが開く音がした。
「おはよ」
その声だけで分かる。振り向くと、晴海がいつものように笑っていた。
「おはよう」
私も返す。たったそれだけの会話なのに、胸の奥が温かくなる。
昨日までと何も変わらない。いつもの晴海。いつもの私たち。
でも、私の中ではもう決まっていた。
今日、伝える。
「夏井」
突然名前を呼ばれて、慌てて顔を上げる。
「なに?」
晴海は机の上に教科書を置きながら笑った。
「いや、なんか今日ぼーっとしてるから」
まただ。晴海はいつも、私が隠そうとすることに気づく。



