「夏井は決めた?」
机の上に置いた進路調査票を見る。
「県内の大学にしようかなって思ってる」
そう言うと、晴海は頷いた。
「夏井らしいな」
前にも似たようなことを言われた気がする。
「ちゃんと周りのこと考えるもんな」
そう言って笑う晴海を見て、余計に何も言えなくなった。
晴海はきっと、夢に向かって進もうとしている。私はそれを応援したいと思う。
でも、同時に思ってしまう。
行かないでほしい。まだ隣にいてほしい。
そんな自分勝手な気持ちが、心の奥から消えてくれなかった。
「晴海は?」
聞きたい。でも、聞けない。聞いてしまったら、昨日のことを説明しなきゃいけなくなる気がした。
「先生との話、聞いてた」
なんて言ったら、変に思われるかもしれない。
それに、もし晴海が「そうだよ、県外に行く」と当たり前みたいに言ったら、私はちゃんと笑える自信がなかった。



