「晴海は?」
気づけば、聞きそうになっていた。でも、最後のところで言葉を飲み込む。
「……何?」
晴海が不思議そうに見る。
「いや……なんでもない」
笑って誤魔化す。
聞けばいいだけなのに。さっき聞いたことを、本人の口から確かめればいいだけなのに。
どうしてか怖かった。
「県外に行くの?」
その一言を言った瞬間、本当に何かが変わってしまいそうな気がした。
「そっか、夏井知ってたんだ」
そう言われたら、どう答えればいいんだろう。
「先生との話、聞いてたの?」
そう思われるのも嫌だった。
でも、それ以上に怖かったのは、晴海が遠くへ行くことを当たり前みたいに話すことだった。
私だけがこんなに寂しく思っているみたいで。そんなことを考えているうちに、分かれ道に着いてしまった。
「じゃあ、また明日」
晴海がいつものように手を上げる。
「うん、また明日」
私も笑って返す。
でも、背中を向けて歩き出した瞬間、さっきまで我慢していた気持ちが一気に溢れそうになった。
晴海は何も変わっていない。いつも通り笑って、いつも通り隣にいてくれる。
でも、私だけが知ってしまった。この時間には終わりがあるということを。



