その日の帰り道、私はいつもより少しだけゆっくり歩いていた。
早く帰りたいわけじゃない。
ただ、家に着いてしまったら、今日聞いたことをちゃんと受け止めなきゃいけない気がしたから。
隣には晴海がいる。晴海から一緒に帰ろうと誘ってくれて、いつもなら、それだけで自然と足取りが軽くなるはずだった。
でも今日は、晴海の横顔を見るたびに、胸の奥が少しだけ苦しくなった。
「夏井」
呼ばれて顔を上げる。
「何ぼーっとしてんの」
晴海が少し笑っている。
「なんでもない」
「珍しいな。夏井がそんな上の空なの」
その言葉に、少しだけドキッとした。
やっぱり晴海には気づかれてしまうのかもしれない。
私が無理して笑っている時も、落ち込んでいる時も、晴海はいつも先に気づいてくれた。
「進路のこと考えてた」
咄嗟にそう答えると、晴海は納得したように頷いた。
「そっか。三年だもんな」
その言葉に、また胸が痛んだ。
三年生。卒業まであと少し。
今まで当たり前だった毎日が、期限付きのものだと気づいてしまった。



