「最近そればっかだよな」
「うん」
それだけしか言えなかった。本当は聞きたいことがあった。
『県外に行くの?』『どうして?』『ずっと前から決めてたの?』
聞きたいことは山ほどあるのに、どれも口にはできなかった。
もし聞いてしまったら、「聞いてたの?」って思われる。
それに何より、そんなことを聞く資格が私にあるのかな、とも思った。
ただのクラスメイト。隣の席の友達。その立場で、進路に口を出せるわけがない。
晴海は何も知らずに教科書を机へしまいながら、「あ、そうだ」と思い出したように笑った。
「この前撮った写真、現像したら意外とちゃんと撮れてた」
ひまわり畑で撮った写真。その一言だけで、胸がきゅっと締めつけられる。
「あとで送る」
「……うん」
笑って返したつもりだった。でも、自分でも分かるくらい、その笑顔は少しだけぎこちなかった。
晴海との思い出が増えれば増えるほど、その先にある別れが少しずつ輪郭を持ち始めていた。
だからこそ、隣にいる今この時間が、急に愛おしく思えてしまった。



