「でも焦るよね。みんな決まってきてるもんね」
「……うん」
教室を見渡すと、何人かは進路調査票を見せ合って話していた。
「第一志望ここにした」
「え、レベル高くない?」
「親に反対されてさ」
そんな会話が耳に入るたび、自分だけ置いていかれている気がした。
大丈夫。まだ時間はある。
そう自分に言い聞かせても、心は全然落ち着かなかった。
将来なんて、まだ遠い話だと思っていたのに。
気づけば、その将来はもう目の前まで来ている。
「本当にやりたいことないの?」
「……分かんない。好きな教科とかはあるけど、それを仕事にしたいかって言われると違うし」
「そっか」
緑はそれ以上何も聞かなかった。ただ、「焦って決めなくてもいいとは思うけどね」と小さく笑う。
でも、その言葉だけでは不安は消えない。
焦らなくていいと言われても、時間だけは待ってくれないから。



