ホームルームが終わると、さっきまで静かだった教室が一気に騒がしくなった。
「もう進路決めた?」
「推薦の結果いつ?」
「オープンキャンパスどうだった?」
そんな言葉があちこちから聞こえてくる。
夏休み前までは、文化祭や体育祭の話をしていた教室が、いつの間にか受験一色になっていた。
私は机の上に置いたままの進路調査票をぼんやり眺める。
白紙だった前回とは違って、今度こそ何か書かなきゃいけない。
「進路、決まった?」
近くで声がして、顔を上げると、緑がいつもの笑顔でこちらへ歩いてきた。
私は小さく首を横に振る。
「まだ」
「そっかぁ」
緑は私の隣の机に軽く腰を預ける。
「でも、県内の大学とか行きそうなイメージある」
「イメージ?」
「なんとなく。家族とも仲いいし、一人暮らししたいって感じもしないし」
「確かに」
自分でもそう思う。
県外に出てまで叶えたい夢があるわけじゃない。
どうしても行きたい大学があるわけでもない。
ただ、何となく毎日を過ごしていたら、受験生になってしまっただけ。



